社会への「問い」かけを通じてブランド変革とリベラルアーツの魅力を発信する

 東京女子大学は、2025年度の教学改革を機に「問いプロジェクト -TONJO QUESTION-」を立ち上げました。同プロジェクトの目的は、東京女子大学が創立以来追求してきた「リベラルアーツ教育」の「正解のない問いに向き合い、考え抜く力」に焦点を当て、魅力を発信すること。多様なステークホルダーに向けた、リブランディングの取り組みを聞きました。
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次の100年を前に確認した「自分たちが大切にしていること」

 東京女子大学は2018年に創立100周年を迎え、次の100年に向けて2024年から教学改革に取り組んでいる。5学科からなる現代教養学部を20254月からは人文学科、国際社会学科、経済経営学科、心理学科、社会コミュニケーション学科、情報数理科学科の6学科体制に再編。コース制導入や他学科履修の必修化、副専攻の拡充などにより、これまで以上に分野横断的な学びを後押ししてゆく計画になっている。

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 同大学の特色は、1918年の創立以来、キリスト教の精神に基づくリベラルアーツ教育をしていること。教学改革を担当した現代教養学部長の小田浩一氏は「教学改革をきっかけに、東京女子大学のリベラルアーツの学びの魅力をどのように伝えていくべきか考える必要があり、リブランディングに取り組むことになりました」と話す。
 東京女子大学ではこれまでも、リベラルアーツについて議論が行われていたという。「100年以上前に始まった歴史のあるリベラルアーツ教育を守りたい思いがある一方、時代や社会の変化に合わせて進化させていく必要もあります。それを踏まえ、これからのリベラルアーツ教育は、どうあるべきかを考え続けてきました」(小田氏)。
 最初に行ったのは各学科の教職員への「東京女子大学のリベラルアーツ教育」についてのヒアリング。その結果、「全ての学科で大切にしていること」が共通していたという。それは「問いを持つこと」だった。

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 「自ら疑問に感じたことに対して、新しい問いを持つことを大切にしていることがわかりました。学生たちにも伝え続けていて、取り組んでいるという話が全学科で共通していたことが強く印象に残りました。最終的に、自ら問いを立て、考え続けられる人を養うことが東京女子大学のリベラルアーツのコアなのではないかと考え、それを軸に推進していくことに決まりました。それが『問いプロジェクト』の始まりです」(小田氏)

教職員はもとより、学生も含めた「中の声」を巻き込み、大学全体でリブランディングに取り組む

 具体的なプロセスでは、各学科専攻の教員に「それぞれの学科の視点から、正解のない『問い』を考えてください」と呼びかけたところ、1週間で196件の問いが集まったという。
 リブランディングには学生の視点も必要だと考え、広報課を通じて12名の学生にも協力してもらい、196件の「問い」を実際に印刷して並べ、これからの100年に向けた「東京女子大学のリベラルアーツ」にふさわしい問いを探していった。
 「学生たちの率直な意見にも耳を傾け、若い世代自身が身近に感じられる『問い』や、世界が抱える社会課題について考える『問い』など、学部全体から1つ、各学科から6つ、計7つの問いを選定しました」(小田氏)

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 多様な視点や議論の大切さ、学び続ける姿勢など、東京女子大学のリベラルアーツの学びや魅力を伝えることを目指し、その7つの「問い」を広告として発信していくことも決まった。
 広告においては、「問い」だけを伝えるのでは、意図が伝わりづらく、誤解を生じる可能性もあると考え、解説文もつけることにした。「広告として打ち出したい『問い』を各学科に戻し、意味や背景、そもそもの問題点などを解説する文章を作成してもらったのです」(小田氏)

新聞の媒体や読者特性に合わせた、ニュース性や時代性を反映した問いかけ

 ブランドステートメントは「正解がない時代に、問い続ける力を。」に決定。広告のビジュアルは漢字の『問』を象った赤い枠の中に「問い」の文章を入れ、そばにボディーコピーのような位置付けで解説文を配置するというデザインにした。
 このフォーマットで「問いプロジェクト」の広告は、新聞広告と交通広告、屋外広告のほか、大学HP、大学公式のSNSなどで展開した。

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 東京女子大学 広報課の福森まり子氏は媒体の選定について、「交通広告は、移動時間を一緒に『問い』について考える時間にしていただくことが狙いでした。新聞広告は、手元に届くという特性から、ボディーコピーも含めてじっくり読んでいただけるメディアとして選びました。大学の受験校を決めるとき、保護者の影響は少なくありません。新聞は親世代が読んでいる媒体であることも選んだ理由です。掲載時期はオープンキャンパスのタイミングに合わせました。朝日新聞は、特に教育に強いことは以前から把握しており、購読している教職員も多いと思っています」と話す。

 朝日新聞には、6月から7月にかけて3回、「現代教養学部」「社会コミュニケーション学科」「情報数理科学科」の問いを5段広告として掲載した。「朝日新聞に掲載した3つの問いは、新聞という特性から新聞記事としても取り上げられるような、ニュース性や時代性、社会課題を反映したものを選びました」(福森氏)。

20240623_東京女子大学_教育面 2024年6月23日付 朝刊 1.29MB
20240629_東京女子大学_スポーツ面 2024年6月29日付 朝刊 1.07MB
20240706_東京女子大学_くらし面 2024年7月6日付 朝刊 1.90MB

 掲載日はいずれも「ボディーコピーまでじっくり読めるよう、時間的にゆとりがあると思われる」土曜日と日曜日にした。「新聞の読者は知的好奇心が強いと認識しているので、『問い』を自ら考えるだけでなく、周囲の人との話題にしていただくことも想定しました」(福森氏)

 新聞について小田氏も「新聞に掲載されている情報全てが正しいとは限りませんが、見識のある人たちがスクリーニングして今、伝えるべきことを念入りに考えるプロセスがあるところが、個人によるSNSでの発信との大きな違いだと思います。大学の授業でも新聞に書かれていたことを参照することも少なくなく、大事なメディアのひとつと考えています」と話す。

問いを立て、考え続ける力を養うために

 東京女子大学にとって、今回のような広告展開は初めてだったという。
 「18歳人口は減少傾向です。今のタイミングで東京女子大学の社会での位置付けを伝えたいという思いがありました。そうした状況も広告掲載を決めた理由のひとつです」(小田氏)

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 広告掲載後の反響について、新聞広告の共通調査であるJ-MONITORの自由回答結果には、「問い」の内容が面白いといった声や、周りの人と一緒に考えたい、時代性を反映した問いで新たな視点に気付いたといった、「うれしい反応がいくつもあった」と福森氏。また、「問い続ける姿勢」に共感する声も多数寄せられたという。同様に「問いを立てる」ことに意識を持つ大手学習塾から「話を聞きたい」と連絡もあった。 
 その一方、交通広告をきっかけにある問いかけがSNSで拡散され、賛否両論となった。「否定的な意見の大半は、ボディコピーの中で解説している視点を踏まえずに述べられたものだったのです。学内でも議論したのですが、情報の一部だけが切り取られてSNS上に拡散していくことは止められません。このようなSNSの性質や、SNSとの接し方も、私たちにとっては新しい『問い』であり、これを学習の機会と捉えていこうという結論に至りました」(小田氏)
 問いプロジェクトは、今後も継続して取り組んでいくという。また、大学として大切にしている「問いを立て、考え続ける力」は新たな授業科目にも反映されている。

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 2024年度から、スタートした「知のかけはし科目」では、異なる専門分野の教員2名が「正解のない大きな問い」をテーマに1つの授業を担当する。複数の視点から物事を捉えることや、学びの広がり、楽しさを体験することが狙いだ。これを、今後は35科目開講する予定だという。「私は心理学が専門なのですが、哲学の先生とそれぞれ『心』をテーマにした授業をしました。2人の先生がお互いの授業を受けるのもポイントで、学生からは『正反対なことを言う先生も見ているので緊張感もあり、その様子を見るのも面白い』といった声も寄せられています」(小田氏)。

 女性が社会でより活躍できるよう、その後押しをすることは女子大学の役割でもある。「共学の大学でも女性が学ぶことができる今、女子大の意義が問われることもありますが、私たちは女子大で学ぶ良さが絶対にあると確信しています。共学には社会の縮図のような男性主体の仕組みがまだ残っていて、学生たちがそれを当たり前のものとして取り入れてしまう可能性もあります。女子大には女性が活躍できる機会が多く、本来持っている自分の力を出すことができると考えます。問いプロジェクトをきっかけに、東京女子大学で学ぶ意義も発信していけたらと思っています」と小田氏は結んだ。

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